カテゴリー別アーカイブ: 判例

同一労働同一賃金 中小企業に大きな課題

正社員と同様の業務内容にも関わらず、契約社員について手当や休暇制度に格差があるのは労働契約法に違反するとして争われた裁判で、一部の格差について不合理な差異に当たると判断された。契約社員と正社員の賃金制度に一定の違いがあることまでは否定していないが、手当の一部支給や休暇の付与を行うよう求める内容となっている。 続きを読む

原判決を破棄、高裁に差し戻す 廃止負担金請求事件―最高裁

大阪府工業用水道事業供給条例23条等の規定により工業用水道の使用を廃止した者が納付しなければならないとされる負担金が、地方自治法224条、228条1項にいう分担金に当たるかどうかが争点となった事案で、最高裁第一小法廷は、当局側である上告人の請求を棄却した原判決を破棄し、大阪高裁に差し戻した。 続きを読む

相続の株式評価同族株主判定 配当還元方式で課税庁側を棄却

妻(原告)がA社の代表取締役だった夫の有していたA社株を相続した際の相続税の申告について行われた所轄税務署の更正処分に対し、原告が取消しを求めた事案で、東京地裁は税務署側の主張を棄却した。 続きを読む

売買価格決定の申立てできず 原審に続き抗告を棄却―最高裁

会社法179条1項の特別支配株主となった利害関係参加人が株式売渡請求の公告後、抗告人に株式を譲渡。同条の4第1項1号の通知または同号および社債、株式等の振替に関する法律161条2項の公告がされた後、抗告人が会社法179条の8第1項に基づく売買価格の決定の申立てをしたところ、できないとされた。その可否が争われた事案で最高裁第二小法廷は、できないとした原審の判断は是認できるとし、抗告を棄却した。 続きを読む

原処分の一部取り消し 必要経費認める―国税不服審

原処分庁が、審査請求人の申告した不動産所得の金額の計算上、必要経費に算入した支出の一部は必要経費に該当せず、また、医師としての健康診断の業務に係る報酬を雑所得として更正処分等をしたのに対し、請求人が▽調査手続きは違法▽更正の理由付記に不備がある▽不動産所得と雑所得に係る必要経費の認定に誤りがある―として原処分の取り消しを求めた事案で国税不服審判所は28年11月1日付で、審判所が行った調査により追加で認容すべき必要経費の額を認め、処分の一部を取り消した。 続きを読む

事業所得は請求人に帰属せず 処分の全部取り消し―不服審

飲食店に係る所得税と消費税の期限後申告書を提出した審査請求人が、飲食店に係る事業所得は請求人に帰属しないなどとして更正の請求をしたところ、原処分庁が更正をすべき理由がない旨の通知処分を行った。請求人がその全部の取り消しを求めた事案で国税不服審判所は28年11月15日付で、営業許可や各契約等が請求人自身の名義により行われているものの、事業を支配管理し、収益を享受している者は請求人ではないから、事業に係る所得は請求人には帰属しないとし、処分の全部を取り消した。原処分庁の主張を全否定した形だ。 続きを読む

全体を一団の地と評価すべし 原処分庁の主張を排す―不服審

審査請求人4人が相続税の期限内申告と修正申告をした後、相続により取得した各土地の価額について、各土地と隣接地を合わせた土地を一つの評価単位として、財産評価基本通達24―4《広大地の評価》の定めを適用して評価すべきだとして、それぞれ更正の請求をしたところ、原処分庁が当該各土地は複数の評価単位に区分して評価すべきだなどとして、請求の一部のみを認める内容で各更正処分をした。4人がその全部の取り消しを求めた事案で国税不服審判所は28年12月20日付で、1人については審査請求には理由なしとして棄却、他の3人の審査請求はいずれも原処分の一部について、理由があるとして限度付きで認容する旨裁決した。 続きを読む

和解契約の効力、無効にならぬ 原判決破棄―司法書士の行為

Aの破産管財人(被上告人)が貸金業者(上告人)に対し、 Aと業者間の継続的な金銭消費貸借取引に係る各弁済金のうち、利息制限法所定の制限利率による金額を超えて支払った部分を元本に充当すると過払金が発生していると主張して、不当利得返還請求権に基づき返還等を求めた事案で最高裁第一小法廷は、被上告人の請求を棄却した第1審判決の結論は正当だとし、これを認容した原判決を破棄、被上告人の控訴を棄却した。 続きを読む

歩道状空地における判旨にて 通達の減額評価に対応―国税庁

評価通達24「私道の用に供されている宅地の評価」では、道路としての利用状況、所有者が自由に使用、収益をすることに制約が存すること等の事実関係に照らし判断しているところ、「歩道状空地」にあたる宅地を共同住宅の敷地の一部として、同通達を適用せず評価していた事例があった。 続きを読む

原判決には所論の違法ない 上告を棄却―特許権侵害事件

「シートカッター」という名の器具を発明した特許権者(上告人)と、似た工具の販売業者(被上告人)の間で争われていた特許権侵害差し止め等請求事件で最高裁第二小法廷は、本件無効の抗弁を容れ、第1審判決中、被上告人敗訴部分を取り消し、上告人の請求をいずれも棄却する旨の判決を言い渡した原審の判断を認容、上告を棄却した。

原判決言い渡し後、上告人が行った特許に係る特許請求範囲の訂正(内容は減縮)審決確定、被上告人が行った別件審決(特許無効審判の請求は成立せずの審決)の取り消し請求棄却判決確定があった。上告人は、原判決の基礎となった行政処分が後の行政処分により変更されたことで民訴法338条1項8号に規定する再審事由があり、原判決には法令の違反があると主張。

最高裁は、特許権者が事実審の口頭弁論終結時までに訂正の再抗弁を主張しなかったにもかかわらず、その後に訂正審決等が確定したことを理由に事実審の判断を争うことは、訂正の再抗弁を主張しなかったことについてやむを得ないといえるだけの特段の事情がない限り、特許権の侵害に係る紛争の解決を不当に遅延させるものとして、特許法104条の3および4の各規定の趣旨に照らして許されないと説示。原判決には所論の違法はないと断言した。

■参考:最高裁判所|特許権侵害差止等請求事件(平成29年7月10日・最高裁判所第二小法廷)

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86898