減価償却資産たる営業権でない 配偶者経営の診療所―審判所

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医師である配偶者が営んでいた診療所の事業(旧診療所)は他の診療所を上回る収益の稼得を可能にする無形の財産的価値を有していた。その引き継ぎの際に支払った金員は所得税法第2条《定義》第1項第19号に規定する減価償却資産となる営業権の対価に該当、営業権に係る減価償却費を必要経費に算入できるか、その可否が争われた事案で国税不服審判所福岡支部は29年5月8日付で、算入できないとし、審査請求人の請求を棄却した。

審判所は営業権について、当該企業の長年の伝統と社会的信用、立地条件、特殊の製造技術や取引関係の存在、それらの独占性等を総合した他の企業を上回る企業収益を稼得できる無形の財産的価値を有する事実関係をいい、当該事実関係が個々の主観的要素を離れて営業組織に客観的に結実した形で表象された場合に初めて該当すると指摘。

医師の行う業務は個々の医師の専門的知識や個々の患者との個人的信頼関係を基礎に成り立つ一身専属性の高いものであるから、配偶者の専門的知識等や患者との個人的信頼関係などの事実関係は旧診療所に客観的に結実した形で表象されたものとは認められず、また当審判所の調査結果でも無形の財産的価値を有する事実関係や、客観性のある形と認めるに足る証拠はないとした。