生コンクリート製造等の会社である上告人は18年、一般貨物自動車運送事業等の会社である被上告人に対し所有する土地を賃貸し引き渡した。同契約は26年、上告人からの解除で終了したが、被上告人はその前から上告人に対し、上告人との間の運送委託契約によって生じた弁済期にある運送委託料債権を有していた。上告人が被上告人に対し、所有権に基づく土地の明け渡し等を求める事案で、最高裁第一小法廷は原審に続き上告を棄却した。
土地について被上告人は、同債権を被担保債権とする商法521条の留置権が成立すると主張。上告人は、不動産は同条が定める「物」に当たらないとする。最高裁は▽民法は留置権の目的物を「物」と定め、不動産を除外していない▽521条の留置権についても、不動産を目的物から除外することをうかがわせる文言はない▽同条の趣旨は、商人間における信用取引の維持と安全を図る目的で、債権を担保するため、商行為によって債権者の占有に属した債務者所有の物等を目的物とする留置権を特に認めたものと解される▽不動産が留置権の目的物となり得ると解することはその趣旨にかなう―などと説示。不動産は、521条が商人間の留置権の目的物として定める「物」に当たると解するのが相当だとした。
■参考:最高裁判所|建物明渡等請求事件(平成29年12月14日・第一小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87304