ずっと以前、薪割り名人の話を聞く機会があった。斧で次々に均等の大きさに割る様子は、大変痛快な気分になるものだ。後でそのコツを尋ねてみたところ、「こんなの簡単だよ。俺の体の形や斧の振り下ろし方をよく見ていれば誰でもすぐ出来る。素直な人は早いよ」という答えだった。
また、X社(食料品卸業)では得意技を登録して、もし何かに利用した場合は報奨金を出す制度を作った。社長自らの発案で、社長もやや風変わりな得意技(ハチ退治、木登り、折り紙、日本酒の銘柄判定)を登録した為、社員も面白半分で登録した。約50人の社員がのべ100種類以上の技を登録したそうだ。得意技と言っても、ある楽器演奏が達人級の人もいれば、単に料理や木工等が得意(好きという事)という人も大勢いた。
一般に、得意技の習得は、趣味や必要やむを得ざる仕事等から始まり、それが好きになれば自然に上達して行くようである。ただ上達のスピードは指導者がいるか否か、本人の習得態度や向上意欲等に左右される。さらに、得意技を持っている人は、他の物事を習得する時も比較的早いと言われる。習得のコツを持っているのかもしれない。習得のコツを、思い切って言えば上手な人(指導者)の態度や行動を素直にまねる事ではなかろうか。