自宅建物の所有者と建築物の設計・施工等を営む業者が建物の増築工事の請負契約を締結。業者は増築工事と追加変更工事を完成させ引き渡した。
増築部分には瑕疵が存在。業者(上告人)が所有者(被上告人)に対し損害を被ったとして請負代金と25年12月4日からの遅延損害金の支払い等を求めて提訴(本訴)。所有者は瑕疵修補に代わる損害賠償金と26年7月2日からの遅延損害金の支払い等を求めて提訴(反訴)。上告人は被上告人に対し、本訴請求に係る請負代金債権を自働債権、反訴請求に係る瑕疵修補に代わる損害賠償債権を受働債権として対当額で相殺する旨の意思表示をし、反訴請求についての抗弁として主張。
原審は、上告人が相殺の抗弁を主張することは重複起訴を禁じた民訴法142条に反し許されないとした。
最高裁第二小法廷は、請負契約に基づく請負代金債権と目的物の瑕疵修補に代わる損害賠償債権の一方を本訴請求債権とし、他方を反訴請求債権とする本訴と反訴が係属中に、本訴原告が反訴において本訴請求債権を自働債権とし、反訴請求債権を受働債権とする相殺の抗弁を主張することは許されると説示。原判決と第1審判決を「被上告人は上告人に対し562万1,800円および年6分の割合による金員を支払え」と変更した。
■参考:最高裁判所|請負代金請求本訴,建物瑕疵修補等請求反訴事件(令和2年9月11日・第二小法廷)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89700