上告人は法令等の遵守に関する事項を社員行動基準に定め、企業集団の業務の適正等を確保するためのコンプライアンス体制を整備。その一環としてグループ会社の事業場内で就労する者が法令等の遵守に関する事項を相談できるコンプライアンス相談窓口を設け、申し出があればこれに対応するなどしていた。
被上告人は子会社の契約社員として上告人の事業場内で就労。同じ事業場内にて他の子会社の従業員から繰り返し交際を要求され、自宅に押しかけられるなどした。被上告人は上記行為について、上告人が上記体制の整備による措置を講ずる等の信義則上の義務に違反したとして債務不履行または不法行為に基づき損害賠償を求める事案で最高裁第一小法廷は、原判決中、上告人敗訴部分を破棄、同部分につき被上告人の控訴を棄却した。
第1審は請求を棄却したが、原審は債務不履行に基づく損害賠償請求を一部認容した。最高裁は、上告人が本件申し出の際に求められた被上告人に対する事実確認等の対応をしなかったことをもって、上告人の被上告人に対する損害賠償責任を生じさせることとなる義務違反があったとはいえず、上告人は被上告人に対し、本件行為につき債務不履行に基づく損害賠償責任も、不法行為に基づく損害賠償責任も負わないとした。
■参考:最高裁判所|損害賠償請求事件(平成30年2月15日・第一小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87458