注意義務違反ありと即断できぬ 司法書士敗訴を破棄―最高裁

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いわゆる“土地転がし”に係り多額の損失を被った不動産の売買・管理等を目的とする会社が、当該不動産の所有権移転登記申請の委任を受けた司法書士に対して3億4,800万円の損害賠償金と遅延損害金の支払いを求める事案で最高裁第二小法廷は、東京高裁が行った上告人の司法書士敗訴部分を破棄、差し戻した。

高裁は、上告人は契約締結にあたり注意義務を怠り、被上告人の不動産会社に対して不法行為責任を負うとし、被上告人の請求を3億2,400万円と遅延損害金を求める限度で認容した。不動産の登記簿上の所有名義人は外国籍のAだが、交渉や契約にはAとAの代理人を装った者が出席。のちに契約時の印鑑証明書が偽造だったことが判明、契約はいずれも無効となった。

最高裁は▽上告人にとって委任者以外の第三者に当たる被上告人との関係において、上告人に正当に期待されていた役割や関与の程度等について検討せず、注意喚起をはじめ適切な措置をとるべき義務があったと直ちにいうのは困難▽上告人がさらに積極的に調査した上で、代金決済の中止等を勧告する等の注意義務を被上告人に対して負っていたとはいえない―などと説示。十分に審理せず直ちに注意義務違反があるとした原審の判断には法令の違反があるとした。

■参考:最高裁判所|損害賠償請求事件・令和2年3月6日・第二小法廷・破棄差戻|

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89286