Aの相続開始後、認知によって相続人となった上告人が、Aの子ですでに遺産分割を行っていた被上告人らに対し民法910条による価額の支払いを求める事案で 最高裁第二小法廷は、原審に続き上告および附帯上告を棄却した。これにより遺産の価額算定の基準時は、上告人が被上告人らに対して価額の支払いを請求した23年5月6日、価額の支払い債務が遅滞に陥る時期はその翌日の7日となることが確定した。
裁判では価額算定の基準時と債務の遅滞に陥る時期が争われていた。Aの遺産のうち積極財産の評価額は、被上告人による分割協議成立時の19年6月25日時点では総額17億8,670万円余だったが、支払い請求のあった23年5月6日時点には7億9,239万円余に大幅に低減。第1審の口頭弁論が終結した25年9月30日時点は10億0,696万円余だった。
最高裁は、相続の開始後、認知によって相続人となった者が他の共同相続人に対して民法910条に基づき価額の支払いを請求する場合における遺産の価額算定の基準時について、価額の支払いを請求した時と解するのが相当であり、他の共同相続人の価額の支払い債務は、期限の定めのない債務であって、履行の請求を受けた時に遅滞に陥ると解するのが相当だと説示した。
■参考:最高裁判所|価額償還請求上告・同附帯上告事件(平成28年2月26日・最高裁判所第二小法廷)|
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85705