最高裁第三小法廷は、金融商品取引法197条の2第15号、167条の2第2項(167条1項6号)が適用された金商法違反被告事件で上告を棄却した。第1審、原審ともに、被告人が株式公開買い付け(TOB)実施に関する事実を職務に関し知った場合に該当すると解し金商法を適用した。
被告人はA証券F部に所属するジュニア(上司の指示を受け従事する下位の実務担当者)で、事件となったTOB案件の関係者ではなかったが、同案件を担当していた同じジュニアのBと同じ室内で執務し、通話中のBの発言を聞き取ることができた。Bの発言やF部の共有フォルダ内の一覧表の閲覧からBが担当している案件を類推、インターネットで検索し、C社が上場子会社D社株に対しTOBを行うという事実を知り、知人のEにあらかじめD社の株券を買い付けさせて利益を得させる目的で、TOB公表前にEに伝え、EがD社株券を買い付けた。
最高裁は「自らの調査により子会社を特定したとしても、証券市場の公正性、健全性に対する一般投資家の信頼を確保するという金商法の目的に照らし、被告人において本件公開買い付けの実施に関する事実を知ったことが同法167条1項6号にいう『その者の職務に関し知つたとき』に当たるのは明らかだ」とした。
■参考:最高裁判所|金融商品取引法167条1項6号にいう「その者の職務に関し知ったとき」に当たるとされた事例(令和4年2月25日・第三小法廷)|
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=90949