消滅時効中断の効力ある 充当対象無指定の弁済―最高裁

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父から3回計953万5千円を借りた長男が父の生前、弁済を充当すべき債務を指定することなく78万7,029円を弁済した。父の死後、三女がこれら貸し付けに係る債権を相続。

弁済をめぐり三女が上告人、長男が被上告人として争っている裁判で、最高裁第三小法廷は第1審と原審判決を「被上告人は上告人に対し874万7,971円および訴状送達日の1週間後の30年9月27日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え」と変更した。

被上告人は時効消滅、上告人は消滅時効の中断を主張。第1審判決は上告人の請求を1回目に係る残元金とその遅延損害金の支払いを求める限度で認容。原審は▽弁済は法定充当により1回目に係る債務に充当され、被上告人は弁済が充当される債務についてのみ承認をした▽2・3回目について消滅時効は中断せず、貸し付けは時効により消滅したとして、上告人の控訴を棄却した。

最高裁は、同一の当事者間に数個の金銭消費貸借契約に基づく各元本債務が存在する場合に、借り主が弁済を充当すべき債務を指定することなく全債務を完済するのに足りない額の弁済をした時は、当該弁済は特段の事情のない限り、各元本債務の承認として消滅時効を中断する効力を有するとした。

■参考:最高裁判所|貸金返還請求事件・令和2年12月15日・第三小法廷)

https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89896