被相続人の遺産分割をめぐり嫡出子と非嫡出子が民法910条を基に係争している事案で最高裁第三小法廷は、被上告人(非嫡出子)に支払われるべき価額の算定の基礎となる遺産の価額は、被相続人の遺産のうち積極財産の価額とした原審の判断を是認、上告を棄却した。
亡Aの妻Bと子Cが遺産分割協議を成立させた後、DがAの子と認知する旨の判決が確定。遺産には消極財産が含まれ、BCは相続債務の負担で合意、Bが債務の一部を弁済。このあとCDの争いとなった。
最高裁は「同条の規定は、相続開始後に認知された者が遺産分割を請求しようとする場合に、他の共同相続人が既に処分をしていた時には、その効力を維持しつつ認知された者に価額の支払い請求を認めることで他の共同相続人と認知された者との利害の調整を図るもの。支払われるべき価額は、当該分割等の対象とされた遺産の価額を基礎として算定するのが衡平の観点から相当。分割は積極財産のみを対象とし、消極財産は、認知された者を含む各共同相続人に当然に承継され、分割の対象とならない」と説示。積極財産の価額と解するのは「相続債務が他の共同相続人によって弁済された場合や、他の共同相続人間において相続債務の負担に関する合意がされた場合でも異ならない」とした。
■参考:最高裁判所|遺産分割後の価額支払請求事件(令和元年8月27日・第三小法廷・棄却)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88889