海産物の販売業を営む同族会社である請求人は、同社の役員が不正に取得した社の金員は給与等に該当しないとして、原処分の取消しを求める審査請求をした。原処分は、当該の金員はその役員に対する給与と認定し、請求人に対し源泉徴収に係る所得税及び復興特別所得税の納税告知処分並びに重加算税の賦課決定処分をしたもの。
最大の争点は、当該の金員が給与等にあたるか否か。役員は専務取締役の地位にあり、現金及び小切手の管理者であったが、会社名義の口座から小切手を振り出すことにより現金を引き出し費消した。所得税法第28条第1項の解釈において、役員が法人を実質的に支配している場合、自己の権限を濫用して法人の資産から支出して得た利得は、実質的にその役員が地位及び権限に対して受けた給与等と解される。原処分庁は、この役員が会社の業務に影響力を有し、その地位に基いて当該の金員という経済的利益を支給されたと主張していた。
審判所は、役員は代表権もなく会社の株式の10~25%を有するに過ぎず、業務を決定する地位にはなかったと判断。代表者が全ての責任を持っており、役員の職務は経理の従業員と変わらず、当該の金員は給与等に該当するとは認められないとし、各処分を違法としてその全部を取消した。
■参考:国税不服審判|取締役が請求人から不正に取得した金員の給与等には該当しないとした事例(全部取消し・平成30年5月7日裁決)|
http://www.kfs.go.jp/service/MP/02/1201000000.html#a111