Weeklyコラム 経営者の苦労と喜び

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寺田寅彦の随筆に、次のような一節がある(『柿の種』岩波文庫)。「鳥や魚のように、自分の眼が頭の両側についていて、右の眼で見る景色と、左の眼で見る景色と別々にまるでちがっていたら、この世界がどんなに見えるか、そうしてわれわれの世界観人生観がどうなるか」同様に、人が何かを観察する場合も、同じ物でも見る部分や方向によって全く違う感想を持つだろう。

A社長(居酒屋経営)の口癖は、「経営者はつまらない」である。理由を聞くと、「従業員に毎月払う賃金で苦労し、やっと役に立つ従業員になるとすぐ辞める」等と言う。また、B店主(中華料理店経営)は、「経営者ほど得な生き方はない」が口癖である。理由は、「定年が無い。他人に給料が払える。商売の方法を自分で決められる。毎年、所得は自分の物になる」等である。同じような苦労であっても、例えば従業員に給料を払う時、単に苦痛と思う経営者もいれば、今月も無事に払えて幸せと喜ぶ経営者もいる。

有能な従業員が退職して独立した時も、部下に見切りを付けられたと悲観する経営者もいれば、自社の従業員レベルの高さに誇りを持つ経営者もいる。経営者の苦労と喜びは、同じ場面でも見る部分や経営ビジョン(展望)の方向等によって全く違う感想を持つことになる。