労働者が業務を一時中断して事業場外で行われた研修生の歓送迎会に途中参加した後、当該業務を再開するため自動車を運転して事業場に戻る際に、研修生をその住居まで送る途上で発生した交通事故により死亡したことが、労働者災害補償保険法1条、12条の8第2項の業務上の事由による災害に当たるかどうかが争われた事案で最高裁第二小法廷は当たると判断した。そして、当たらないとした原判決を破棄、上告人の請求を棄却した第1審判決を取り消すとともに、行橋労働基準監督署長が上告人に対して行った労災保険法に基づく遺族補償給付および葬祭料を支給しない旨の決定を取り消した。上告人側の全面勝訴だ。
業務災害に関する保険給付の対象となるには、業務上の事由であることを要し、その要件の一つとして、労働者が労働契約に基づき事業主の支配下にある状態において当該災害が発生したことが必要。原審は、任意に行った運転行為が事業主の支配下にある状態でされたものとは認められないと判断。最高裁は、会社は事故に至るまで、労働者に対して職務上、一連の行動をとることを要請していたなどとし、同労働者の死亡は労災保険法1条、12条の8第2項、労働基準法79条、80条所定の業務上の事由による災害に当たると説示した。
■参考:最高裁判所|遺族補償給付等不支給処分取消請求事件(平成28年7月8日・最高裁判所第二小法廷)|
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86000