信託契約の受託者が所有する複数の不動産の固定資産税に係る滞納処分として行われた、これら不動産のうちの信託財産である土地とその上にある固有財産である家屋に係る賃料債権に対する差し押さえが適法か否かが争われた事案で、最高裁第三小法廷は違法とした原判決を破棄、適法として被上告人らの請求を棄却した第1審判決は結論において是認できるとして被上告人らの控訴を棄却した。
最高裁は、差し押さえについては滞納固定資産税等のうち、土地以外の不動産の固定資産税相当額に係る部分に基づき、本件賃料債権のうち本件土地の賃料相当額部分を差し押さえることとなる点において旧信託法16条1項との関係で問題があるといわざるを得ないが、滞納固定資産税等のうち本件土地の固定資産税相当額に係る部分に基づき、賃料債権を差し押さえることや、滞納固定資産税等に基づき、賃料債権のうち建物の賃料相当額部分を差し押さえることは同項に何ら反するものではないと説示。
また、国税徴収法63条が、徴収職員が債権を差し押さえる時はその全額を差し押さえなければならないと規定していることなどに照らすと、差し押さえを全体として違法とする特段の事情もうかがわれない、ゆえに差し押さえは適法だとした。
■参考:最高裁判所|差押処分取消請求事件(平成28年3月29日・最高裁判所第三小法廷)|
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85791