今も昔も、文字通り「寝食を忘れて」仕事に没頭する人がいる。年配の知人(宴会場経営)の中に、「創業の頃は、三度の飯は客足の切れ間に立ったまま掻き込み、夜は長靴を履いたまま調理場で寝た」という自営者がいる。
現代もブラック企業の件が話題になるが、長時間労働は自営者の宿命かもしれない。しかし、自営者本人が年中無休で何時間働いても労働基準法違反にはならないが、当然その家族従業者や雇用従業員を巻き込むことは許されない。
ところで、現在労働者には労働時間の厳しい法的規制がある。しかし、実質的な労働時間規制が野放し状態になっている職業も多い。一例を挙げれば、小中学校の教員である。マスコミの報道によると、教員の相当割合が夜遅くまで学校に残り、かつ帰宅後も翌日の授業の準備やテスト作り等をしているそうだ(恐らく、帰宅後は残業の意識はないのであろう)。また、学級担任の教員は負担が増える同僚に遠慮して、年休を取らない者も多いと聞く。職業の特性、地位等によって労働時間や残業の観念が異なるが、今や指揮命令によって拘束される人の労働時間はきめ細かい管理が求められている。
今後、一般の労働者が「寝食を忘れて」働くことを強制されるような組織体は、存続が難しくなるであろう。