本件は、公売公告処分に至る過程で差押通知がなされなかったこと、及び公売公告において借地権に関する重要事項の記載を欠いたことが争点となり、結果として当該公売公告処分の全部取消しが認められたものである。
請求人は、対象不動産たる土地に借地権を有していたが、当該借地権は登記されておらず、また建物も既に滅失登記がなされていた。このため原処分庁は、請求人は借地権に関して対抗要件を具備しておらず、よって当該土地の差押や公売に関し不服申立てを行う資格を欠くと主張した。
国税不服審判所は、請求人が国税徴収法第55条に定める「差押通知を受けるべき質権者等」に該当すること、及び差押換請求権を有する者であることを根拠に、公売公告処分について不服申立てを行う法的利益を有する者であると認定。本件公売公告処分について、(1)事前手続である差押通知が欠如していたこと、(2)公告内容において重要事項の記載を欠いたことの両面において、重大かつ取消し得べき瑕疵が存在すると結論付け、当該処分の全部取消しを命じた。本件は、公売における利害関係人の権利保護、ならびに公告の記載事項の実質的適正性の確保が強く求められることを示す事例となった。
■参考:国税不服審判所|公売公告処分は、差押通知を欠いたまま行われ、また、公売公告処分に、「公売に関し重要と認められる事項」に係る記載が漏れていることから、公売公告処分には取り消し得べき瑕疵があるとした事例(公売公告処分・全部取消し)(令和6年9月25日裁決)|
https://www.kfs.go.jp/service/MP/11/0604000000.html#a136