原処分庁は、請求人が保有する差押財産(本件不動産)を公売に付すべき時期について、所轄庁の裁量権の範囲内で合理的に行われたものであるから、違法又は不当な処分ではない旨主張する。
国税不服審判所は、換価に関する時期の判断に当たっては、滞納者の個々の実情を踏まえ、個々の滞納事案における自主納付の見込み、公売による換価額、差押財産の公売による滞納者への影響等諸般の事情を考慮して判断することが相当とするところ、原処分庁に裁量権の範囲の逸脱又は濫用があったとは認められないから、本件公売公告処分は適法であるとした。
しかし本件は、請求人が提出した分割納付誓約書の誓約期間内に、納付計画どおりの自主納付をする蓋然性が高く、直ちに換価することで徴収上有利になる事情もない。また、原処分庁の徴収担当職員が、本件期間内に本件各不動産が公売に付されることはないとの請求人の期待を排斥しなかったことにより、本件各不動産の代替土地を確保し得る機会及び期間が事実上なくなり、公売による請求人の事業に対する影響がより大きくなったことなどの事情があり、その裁量権の行使が、差押財産の換価に関する制度の趣旨・目的に照らして合理性を欠く不当な処分であると判断した。
■参考:国税不服審判所|公売公告処分は、原処分庁の裁量権の行使が差押財産の換価に関する制度の趣旨等の合理性を欠く不当な処分とした事例(全部取消し)|
https://www.kfs.go.jp/service/MP/11/0604000000.html#a132