研修会の講師をして一番困るのは、第一に話を聞く姿勢を取らない人がいる事、第二に話を聞くが理解を示さない人がいる事である。自分の会社や関与先以外での研修会であれば、話をよく聞いて頂いて、なお且つ内容を理解頂ければ、講師の立場としては一応満足となる。
ところが、自社の社員指導や勉強会等の場合は、真剣に聞いて理解するだけでは困るのである。経営者にしてみれば、上司が部下の育成指導を効果的にしているか否かの最終判定は、見聞して理解した事を行動に結びつけているかどうかが重要になる。中国の戦国時代末期に書かれた『荀子』にも同じような言葉が出てくる(藤井専英著、明治書院発行新書漢文大系を参照)。「聞かざるは之を聞くに若(し)かず、之を聞くは之を見るに若かず、之を見るは之を知るに若かず、之を知るは之を行うに若かず。」(若かず;及ばないということ)
では、どうすれば社員が上司の話を聞いて理解し、それを着実に行動に移すのであろうか。(1)上司は日頃から必要な知識や事例を整理して、行動の実践手法を指導出来るようにする(2)現場で見本を見せ、実践を通して教える(3)見聞・理解して行動した社員を正当に評価し、やりがいのある職場づくりに励む、等が挙げられる。