本件は、請求人が、相続により取得した賃貸倉庫に係る修繕工事の請負代金相当額について相続税の課税価格の計算上控除すべき債務として申告したところ、原処分庁が、当該債務は相続開始の際、現に存する被相続人の債務で確実と認められるものに当たらないとして更正処分等をしたのに対し、請求人が、当該債務はその存在と履行が確実と認められるとして、更正処分等の全部の取消しを求めた事案。
相続税法第14条第1項は、同法第13条の規定によりその金額を控除すべき債務は、相続開始当時の現況に照らしその履行が確実と認められるものをいうと解される。国税不服審判所は、そもそも本件請負契約は、本件修繕工事の完了・引渡し後に本件請負代金の支払を本件被相続人に義務付けるものではあるが、本件被相続人に対して本件賃貸倉庫に係る土間床の修繕義務の履行を法的に強制することまでを内容とするものではない。また、請求人が本件請負代金を支払っているからといって、本件修繕工事は、飽くまで本件被相続人ないし請求人による任意の履行が事実上期待されていたにすぎないものとみるのが相当であるとした。
以上、相続税の課税価格の計算上、当該請負代金相当額を債務控除することはできないとして、審査請求には理由がなく棄却した。
■参考:国税不服審判所|相続開始後にされた修繕工事代金相当額は、相続税の課税価格の計算における債務控除をすることができないと判断した事例(令和5年6月27日裁決)|
https://www.kfs.go.jp/service/MP/04/0504070000.html#a131