普通地方公共団体である上告人の消防職員だった被上告人は、任命権者だった氷見市消防長から上司および部下に対する暴行等を理由とする停職2月の懲戒処分(第1処分)を受け、停職期間中に正当な理由なく上記暴行の被害者である部下に対して面会を求めたこと等を理由とする停職6月の懲戒処分(第2処分)を受けた。
被上告人が上告人を相手に、各処分の取消を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償を求める事案で最高裁第三小法廷は、原判決中、上告人敗訴部分を破棄、前項の部分につき名古屋高裁に差し戻した。原審は、第1処分は適法だとして請求を棄却。第2処分については第1処分の停職期間を大きく上回り、かつ、最長期間である6月の停職は重きに失し、社会通念上著しく妥当を欠き、消防長に与えられた裁量権の範囲を逸脱、または濫用した違法なものと判断、取消請求を認容、損害賠償請求の一部も認容した。
最高裁は、第2処分の量定をした消防長の判断は、懲戒の種類についてはもとより、停職期間の長さについても社会観念上著しく妥当を欠くとはいえず、懲戒権者に与えられた裁量権の範囲を逸脱、濫用したとまではいえない。原審の判断には懲戒権者の裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとした。
■参考:最高裁判所|地方公共団体職員の懲戒処分の停職期間中の停職6月の懲戒処分が裁量権の範囲を逸脱濫用の違法とした原審の判断に違法があるとされた事例(令和4年6月14日・第三小法廷・破棄差戻)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=91232