Weeklyコラム 仕事人を労(ねぎら)う

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恒例の春の賃金改定が各社ほぼ出揃った。提示された結果が、従業員を満足させる企業も相当割合になったようだ。中小企業も前年比平均5%程度上げる企業が多く、首都圏パートの時給はほとんどの人が千円を超えるようになった。

さて、経済先進国と言われる日本企業の賃金レベルが、欧米や韓国等より低いのは、一体何が原因だろうか。マスコミ等でその経済理論が説明されるが、全面的には納得出来ず、筆者は主として日本企業経営陣等の労働価値観(仕事に対する価値評価の高低)が低い事にあると思っている。毎年春に賃金交渉をすると、コスト上昇によって物価が上がるとか、企業の採算性が悪化して不景気になるとか、企業と仕事人が敵対しているように感じる。しかし、これには何か根本的な思い違いがあるように思える。

古来「百工を来(ねぎら)えば、則ち財用足る」(働く人を労えば、国の財政は足りる)という言葉がある(中国古典『中庸』、原文は労うという文字を来〈ねぎら〉うと表示している)。天下国家(企業や国民等も含めて)が仕事人を一番大事にする事によって、国の財政も満ち足りるという。コストは労務費を最優先で支出すれば、収支の循環つまり経済活動の流れがスムーズに行き、企業経営や国家財政も順調に進むと考える。