人材の引き抜きという言葉がある。X社(ブランド商品卸)とY社(ブランド商品のネット販売)は、X社の社員をY社へ派遣してブランド情報を指導する提携を協議した。一番もめた事は、情報守秘義務違反と派遣人材の引き抜き禁止条項の契約であった。
一般に人は機会があれば自己に有利な情報や人材を取り込もうとするようだ。敵対関係、協力関係、どちらの場合でも発生する。敵対関係の場合は、相手が持つ情報を収集、俗に言うスパイ活動である。孫子兵法では「用間」と称する。すなわち「聡明な君主やすぐれた将軍が行動を起こして敵に勝ち、人なみはずれた成功を収める理由は、あらかじめ敵情を知ることによってである」(金谷治訳注『孫子』岩波文庫)。
して、このスパイ活動の一つに、「反間」があり、こちら側の為に働く敵側のスパイ、一種の人材引き抜き活動がある。敵から見ると、自己の情報が筒抜けになる。そのような行為は、元々協力関係にある場合でも起こる事がある。敵味方の一部の者が結託して、情報漏洩する場合が珍しくない。
競争相手の経営戦略や社員が持つ各種ノウハウを知る事は、市場競争に勝つ自己の経営計画等を策定する為に有用である。しかし、不正不当な情報収集や人材引き抜き活動等は、厳に慎まなければならない。