中国の習近平国家主席が7月1日、香港返還25周年記念式典で行った重要講話で「香港は苦難を経てよみがえった」と述べ、「一都市二制度」の方針の下、香港の国際金融センター機能を維持し、一層強化したいとの希望を表明した。
これを受けて倉田徹立教大学法学部教授が8月下旬、財務総合政策研究所(財務省所掌)で「香港返還25周年、習近平講話に見る香港の現状と将来」と題して講演、習主席が描く香港の将来像について懐疑的な見方を示した。
その根拠として(1)中国共産党が香港に対してとってきた強硬な政治の代償として、移民流失、国際評価の急低下など国際センターとしての香港の現状は深刻(2)極端なコロナ対策、人材難、制裁のリスクの影響による香港のビジネス環境の悪化―を挙げた。
その上で▽中央政府は政界における民主派に対して排除を進めたにもかかわらず弾圧を緩める気配はない→「国家の安全」を不可侵化、これが構造化するか▽北京は香港政府を改造し、上意下達の徹底→香港の政治・社会は劇変へ、うまくいくか▽北京は経済・金融の独自性・国際性維持を切望、政治は中国式、経済は開放的の「一都市二制度」を理想型としているが、現実は厳しい―など、金融センターとしての香港の将来に疑問符を提示した。
■参考:財務省財務総合研究所|「香港返還25周年、習近平講話に見る香港の現状と将来」|
https://www.mof.go.jp/pri/research/seminar/lmeeting.htm