筆者は経営コンサルタントをしているが、信用・立地・競合調査等の定型調査が多い。定型の調査は、毎回同じような手法で計画を策定する(主に必要な時間と分析法)。
慣れてしまえば、調査の手法や分析法に迷う事はほとんどない。ところが、非定型の調査には、調査の入口から迷う事がある。例えば20年前、指導関与先X社が5階建ての商業ビルを建てる事になった。社長からの依頼は、建築士の設計とは別途に「建物の外見・形状・色彩等」を提案してもらいたい、というものだった。イメージが分かれば、手書きの絵でも写真でも良いという。初めての調査で、引受けた直後は一体何から着手すべきか迷った。最初、社長の要望、商業ビルの雑誌や写真集を研究したが、X社のイメージに合う建物が全く発見出来なかった。
さて、打開策は通勤途上で見る線路沿いのビル群であった。書籍とは違い、実存の建物を観察する事によって、町の産業や環境にバランスした建物の形状や色彩等が見えて来た。後日、現場に行って多くの写真を撮り、X社の社長に示して提案したところ、「私も提案に似た建物のイメージをしていた」と言われ驚いた。その後、非定型の調査は独自の工夫が必要だが、定型調査と違う発想で挑戦すれば必ず成し遂げられると考えるようになった。