人の性格・特徴は多様であるが、一生を通して有益な特性は謙遜(けんそん)の徳であろう。謙遜とは人にへり下る態度である。この謙遜の性格があれば、どんな偉大な成功や高い地位に就いても、他人から妬みや敬遠を受ける事がない。
終わりを全(まっと)うする(有終の美を飾る)人は、謙虚である。良い事をした児を「偉いねえ」と誉めた時、「うん、僕偉いでしょ」と素直に喜ぶのは害が無い。しかし何かを立派にやり遂げた大人を「あなたは偉いですね」と誉めた時、「そう、私は偉いですよ」と威張る事は、大変見苦しいものだ。どんなに高い地位についても謙虚な態度が消えれば、他人は心から敬服しない。謙遜の徳を失えば、大きな成功であればあるほど満月が欠けて行くように、終わりを全う出来ないであろう。
X病院のA院長は、長野県の農家出身であり、奨学金によりやっと医大を卒業した。今日まで35年間X病院に医師として勤めてきた。最近10年間は単なる医療行為だけでなく、職員・入院患者の悩み相談に多くの時間を割くように心掛けた。どんな話も真剣に聞き、院長としての上位の態度ではなく、同等の立場を守って謙虚な態度で応対した。指示や叱責等は全く無かった。退院後や退職後に、A院長と交流を続ける患者や職員が大勢いる。