Weeklyコラム 諫言を素直に聞く

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今年も新卒新入社員が働き始めて1ヶ月程になった。毎年、経営者等から聞く同じ言葉がある。「入社1ヶ月で新入社員の将来が大体分かる。単に仕事上の能力ではない。自己を錬磨する忍耐力だ。その差は、上司や先輩の指導を素直に受入れるか否かだ」、と。

江戸時代の児童教育書にこんな教えがある。「いさめをききて、もしよろこんでうくる人は、善人也、よく家をたもつ。いさめをきらひ、ふせ(防)ぐ人は、必(ず)家やぶる。是善悪のわかるる所なり」(貝原益軒著、石川謙校訂『養生訓・和俗童子訓』岩波文庫)。

人は他人から自己の行為や発言を諫(いさ)められる時、その心境は楽しくなかろう。たとえ他人の諫めが正しいと判断しても、争いや拒否をすれば、以後他人は諫言しなくなる。忍耐力持続の分かれ目は、自己の感情を乗越えて素直に聞くか否かである。諫言を聞く者が君主であれば、国家存亡に関わる。中国唐の時代、太宗(李世民)は部下からの諫言をよく聞く君主と言われた。

「自分の姿を映し出そうとすれば、必ず鏡を用いなければならない。それと同じように、君主がみずからの過ちを知ろうとすれば、必ず忠臣の諫言によらなければならぬ」(呉兢著、守屋洋訳『貞観提要』ちくま文芸文庫)。経営者等も部下からの諫言を素直に聞き取る事が重要だ。