Weeklyコラム 物価変動と商品価格

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「日本では商い口といって、商人(あきんど)が〈儲けはなしだ〉とそらぞらしい誓文(せいもん)を唱えると、客はこれに気をゆるして、なんでも買い求めるのが世間のならわしである」(井原西鶴著『日本永代蔵』堀切実訳注、角川ソフィア文庫)。商売で利益を稼ぐ事は、いつの時代も難しい。

単純に売りさえすれば儲かるものではない。百円で仕入れた物を百円以下で売っても商売は続かない。そこで、仕入れた商品や原料を加工・製造したり、陳列・小分けにしたりして、一定の利益を出している。勿論、これは正当な商売だ。

ところで、最近の物価変動に伴って、商品価格が上昇する場合がある。例えば、小麦等の原料上昇によりパンの小売値を上げる場合である。小麦が10%上がった時、パンの小売価格を10%上げれば、一般に利幅が増える可能性が高い。メーカーは「採算性が苦しい。儲けが全く無い」と言いつつ、うまく立ち回れば売上・粗利益・純利益が10%程度上がる可能性が十分ある。

物価上昇は、急激であれば国民生活を脅かす。しかし、商売人が自制心とバランス感覚を保って行動すれば、むしろ経済成長の踏み台になるかもしれない。いつの時代も、物価は穏やかな上昇であれば、国民所得の上昇や生活水準の向上になる場合がある。