「事に終始あり」という言葉がある。着手する事も、反対に止める事も容易ではない。多くの人が止める適当な時機を探っているうちに、その大事な時機を失ってしまうものである。
ある上場企業の社長は、ヒットした商品が良く売れている時に、生産・販売を停止したという。競争が激しくなって利益率が低下する前に撤退し、次の新商品を売込む戦略で成功した。理論としては共感出来るが、大抵の経営者は止める決断が難しいであろう。何事も止める事が上手な経営者は、終わりをまっとう出来るかもしれない。
さて、経営者の決断の中で重要な事の一つが事業承継である。これまでの経験からすれば、客観的な基準に従って行動する経営者は大抵成功する。例えば、「自分が70歳になったら(又は後継者が40歳になったら)承継させる」等である。困るのは、体力・気力に自信が無くなったら、会社が黒字になったら、後継者が経営者として成長したら、等ではなかろうか。今、直ちに止めてしまえば何とかなると判断していながら、より良い時機を探っている人は、首尾よく行かないかもしれない。特に創業者が引退する時期は、本人の思い入れも強く、後継者も口出しを遠慮する。本人が独自に下す事業承継の決意が大切だ。