古来より子供を教える師は人柄が良い事が尊ばれ、単に学問や知識が豊かであることは求められなかった。子供は師の知識だけでなく、品行や人柄を学ぶからである。
会社等において、部下を教育する上司の条件も単に知識・技術の優秀性だけでなく、人柄や思いやり等によって決まるものである。
X社(輸入雑貨の通信販売業)は、新規サービスや人材獲得に力を入れて、ここ20年で地域一番店に成長した企業である。会社の最大資源は優秀な社員であり、経営戦略は人・物・金の内で人を最優先にした。最初は優秀な社員の採用と育成に力を注いだ。ところが、経営者はある時、優秀な社員には二種類ある事に気づいた。一方は、本人が優秀で、なおかつ部下や同僚に慕われる教育熱心な社員。他方は、本人は優秀であるが、部下や同僚に無関心で会社全体の成長には貢献しない社員である。会社が急成長して、優秀な社員が次々に入社する時には人材不足は無かったが、一定規模で安定した時は人材不足に気づいた。優秀な社員を採用する事よりも、平凡な社員を教育養成出来る上司や先輩がいる方がより効率が良い事に気づいた。今、X社は、上に立つ管理者や先輩が部下を指導する労務体制(例えば、部下の教育・相談を人事評価として重視)を確立しつつある。