上告人は建設会社と4本の請負契約を締結。会社はうち1契約を完成させたが、残る3契約の工事は資金繰りに窮し続行難に。
会社の支払い停止を知った上告人は各未完成契約について契約条項に基づき解除する旨意思表示、各違約金債権とその他の債権を取得。会社側は各報酬債権を取得した。破産手続き開始決定を受け被上告人が破産管財人に。上告人は被上告人に対し、各違約金債権等を自働債権、各報酬債権を受働債権として対当額で相殺する旨の意思表示をしたのに対し、被上告人が破産者と上告人の間の請負契約に基づく各報酬等の支払いを求める事案で最高裁第三小法廷は、原判決中、上告人敗訴部分を破棄、被上告人の控訴を棄却した。
原審は本件相殺のうち、自働債権と受働債権が同一の請負契約に基づかないものは許されないとして、被上告人の請求を一部認容。
最高裁は各違約金債権について、破産法72条1項3号に規定する破産債権に該当するとした上で、各違約金債権の取得は同条2項2号に掲げる「支払の停止があったことを破産者に対して債務を負担する者が知った時より前に生じた原因」に基づく場合に当たり、各債権を自働債権、受働債権とする相殺は、同一の請負契約に基づくものであるか否かにかかわらず許されると説示した。
■参考:最高裁判所|請負人である破産者の支払停止前に締結された違約金債権の取得が,違約金債権を自働債権とする相殺が許されるとされた事例(第3小法廷・令和2年9月8日)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89688