商店や会社を創業する人は、立地条件の選定を重視する。ところが、通常の人は家を新築(購入)する時や転居の際に、買物やサービスの利便性を表す「買物の立地条件」をあまり深く考えていないようだ。
A氏(75歳)は20年前、都心のマンションを売却して、郊外にある最寄駅から10km離れた所にある一戸建てに住みかえた。当時、近隣に20軒程の商店街があったが、地元の商店は利用せず、週1回車で駅近くの大型スーパーで買物をした。その後、近隣の商店は2店に減少したが、車で買物をしている間は不便が無かった。ところが、A氏は交通事故で足が不自由になり、車の運転が出来なくなった。健常者の怠慢であった。現在、A氏は地元農家を組織化して農産物直売所を作ったり、同じような境遇の高齢者数人が協力して共同店舗の運営をしたりしている。外部からの自動車客に頼らず、地元高齢者の需要を中心にしている。
全国で買物難民の問題が注目されている。住居の場所を選定は、その時の境遇(車を運転する、足に自信がある、都市部に通っている等)だけに惑わされず、長期的な地元商店街の活気度や経営者の年代層、地域人口の推移等を調べてみる必要がある。今後、買物の立地条件の地域間格差は非常に大きくなるであろう。