Weeklyコラム 危急時の心得

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最近、テレビ等で「不要不急の外出をしない」という言葉をよく聞く。新型コロナウイルスは、ほとんどの国民が発生を予想していなかった、世界全体の危急である。

大きな危急には、戦争・大火事・大地震・風水害・犯罪等があるが、今回の感染症は身体・社会経済にとつて最も厳しい危急と言える。では、このような場合は、どんな心得で対処したら良いだろうか。古人(二宮尊徳)は「松明尽きて、手に近付時は速(すみやか)に捨(すつ)べし、火事あり危(あやう)き時は荷物は捨て逃(にげ)出べし、大風にて船くつがへらんとせば、上荷を刎(はぬ)べし、甚(はなはだ)しき時は帆柱(ほばしら)をも伐るべし、此理を知らざるを至愚(しぐう=非常に愚か)といふ」(福住正兄筆記、佐々井信太郎校訂『二宮翁夜話』岩波文庫参照)。

過去、関東大震災の時、多くの家財道具を荷車等に積んで広場に避難した何万人という人々が火事で焼死した記録がある。地震・火事等と異なり、感染症予防にはある程度の時間的余裕がある為、予防策の決断が難しい。予防策と引換えに失う行動の自由や財物を捨てる決断が中々つかない。しかし、苦しい決断を強いられたとき、行動の自由と財物の回復可能性はあるが、命は取返しがつかない事を認識すべきだろう。