法人への株式譲渡につき被上告人らが譲渡所得の収入金額を譲渡代金額と同額として所得税の申告をしたところ、所得税法59条1項2号に定める著しく低い価額の対価に当たるとして更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分を受けた。
各処分(更正処分については修正申告または先行する更正処分の金額を超える部分)の取り消しを求める事案で最高裁第三小法廷は、原判決中、上告人敗訴部分を破棄、東京高裁に差し戻した。企業の代表取締役だった被相続人が所有していた社株式の一部を他社に譲渡後に死亡。相続人である被上告人らが被相続人の所得税について行った譲渡時における株式の価額が争点。社株式は取引相場のない株式で、原審は被上告人らの請求を一部認容した。
最高裁は、譲渡所得に対する課税においては、相続税や贈与税の課税を前提とする評価通達の定めをそのまま用いることはできず、所得税法の趣旨に則し、その差異に応じた取り扱いがされるべきだと説示。原審は、譲渡を受けた会社が評価通達188の(3)の少数株主に該当するとして、配当還元方式により算定した額が株式譲渡の時における価額であるとしたものであり、この判断には59条1項所定の「その時における価額」の解釈適用を誤った違法があると結論づけた。
■参考:最高裁判所| 取引相場のない株式の譲渡に係る「その時における価額」につき,配当還元評価に違法があるとされた事例(所得税更正処分取消等請求事件・令和2年3月24日・第三小法廷・破棄差戻)
https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=89339