Weeklyコラム 兆候を捉える
二宮金次郎(尊徳)は、夏の土用前に糠味噌漬けにして食したナスが秋ナスの味がしたことから、天保の大飢饉を予測した。二宮金次郎の偉いところは、直ちに村人を集めて気象異変の影響が少ないソバ・ひえ・あわ等を出来るだけ多く作ることを指示したり、穀物の買い入れをしたりしたことだ。物事を真剣に観察していれば、様々の兆候を捉えて将来の不祥事の防御や新たな経営戦略等に備えることが出来る。例えば、普段よく買物をするスーパーに入って、「店内の清掃や陳列が以前より徹底している」「かごの中の商品点数が増えた」「店員の声が大きく活き活きしている」等を見聞すれば、一般に景気の好転を予想するだろう。
また、会社の取引先を訪問した際に、「受付台の花が萎(しお)れていた」「玄関の電球が切れていた」「駐車場にゴミがたくさん落ちていた」等に気づけば、その会社の先行きに懸念を持つかもしれない。要は、問題発生の兆候を捉えた場合の情報活用である。
問題の兆候を捉える人は多いが、その対応策を考えたり、実施したり出来る人は案外少ないのである。二宮金次郎のように異常気象の兆候を捉えても、大飢饉を懸念した対応策を実行出来ないかもしれない。兆候を捉えることは、その対応策を行動に移して初めて価値を持つ。