未払い賃金の支払いを命じる 債権放棄の実証ない―最高裁

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被上告人(貨物自動車運送業等)に雇用されていた上告人(生コン車運転手)が被上告人に対し、労働協約により減額して支払うとされていた賃金につき、減額分の賃金(25年8月~26年11月支給分)と遅延損害金の支払い等を求める事案で最高裁第一小法廷は、被上告人は上告人に対し減額分として221万余円を支払うよう命じた。

上告人は全日本建設交通一般労組に所属。被上告人は経営悪化に伴い労組側に3度にわたり賃金カットを提案。労組側はこれに応じた。上告人はこの間に定年退職。被上告人は結局、生コン運送部門を閉鎖。被上告人と労組側は賃金債権放棄で合意した。

原審は未払い賃金に係る上告人の請求を棄却したが、最高裁は▽本件合意により上告人の賃金債権が放棄されたとするには、合意の効果が上告人に帰属することを基礎づける事情を要するが、何ら主張立証はない▽同様に、上告人に帰属することを基礎づける事情もうかがわれない▽合意によって上告人の未払い賃金に係る債権が放棄されたとはいえない▽上告人による特別の授権がない限り労協による支払い猶予はできない―などと説示。本件合意によって上告人の未払い賃金に係る債権が放棄されたとはいえないとした。高裁に差し戻し起算日に関し審理を尽くすよう命じた。

■参考:最高裁判所|未払賃金等,地位確認等請求事件(平成31年4月25日・第一小法廷)

http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=88638