会社勤務のAが破産手続き開始決定を受け、破産管財人が選任された。その前にAは借金を繰り返し、給料債権の差し押さえをめぐり貸主と勤務先が係争。裁判を経て、結局2度に分けて弁済された。管財人はこの支払いについて、破産法162条1項1号イの規定により否認権を行使、貸主を相手取って167万円余と法定利息の支払いを請求。
貸主が上告人、管財人が被上告人となって争っている事案で、最高裁第三小法廷は原判決と第1審判決を「上告人は被上告人に対し、26万円とこれに対する26年3月11日から支払い済みまで年5分の割合による金員を支払え」と変更する旨判決した。支払い1は25年10月~26年1月分の一部である26万円。2は26年2月に成立した和解に基づく141万円余。原審は、いずれも給料債権からの支払いであり、Aの上告人に対する貸金債務が消滅するから、否認権行使の対象となるなどとして、法定利息の一部を除いて請求を認容。
最高裁は、第三債務者が差し押さえ債務者に対する弁済後に差し押さえ債権者に対してした更なる弁済は、破産手続き開始の決定を受けた場合、否認権行使の対象とならないとし、2について、Aの給料債権が消滅したあとであるから否認権行使の対象とならない―とした。
■参考:最高裁判所|否認権行使請求事件(平成29年12月19日・最高裁判所第三小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87318