従業員からの預り金を返還しないとした事実が帳簿書類に記載されていないことについて、仮装隠ぺいが認められるかどうかが争われた事案で国税不服審判所は、そもそも請求人には収益に計上すべきだとの認識がなく、故意に帳簿書類に計上しなかったとか、返金しない事実を隠ぺいしたなどの証拠も認められないとし、当該収益(雑収入)の計上漏れは単なる過少申告にすぎないと裁決。平成16年11月1日から8年間の各事業年度の法人税の更正処分、過少申告加算税および重加算税の賦課決定処分を全部取り消した。
請求人は預り金を返還しないことによる雑収入発生の事実を帳簿書類に記載せず、その事実を裏付ける資料を関与税理士に提示せずに請求人代表者の机の引き出し内に管理していた。原処分庁は、この行為は国税通則法第68条「重加算税」が規定する「隠ぺい又は仮装」に該当する旨主張した。
審判所は独自の調査結果を元に、(1)預り金1について、請求人に「隠ぺい又は仮装」の行為は認められない(2)預り金2に関しても、資料が請求人代表者の机の引き出し内に管理されていた事実のみをもって、請求人が雑収入発生の事実を「隠ぺい」したと認めることはできず、そもそも請求人は収益が実現したとの認識を持っていなかったと認められる―との判断を示した。
■参考:国税不服審判所 | 公表裁決事例要旨
<http://www.kfs.go.jp/service/MP/01/0605030200.html#a94>