被上告人が管理していた上告人の個人情報が過失により外部に漏えい。上告人が精神的苦痛を被ったと主張して被上告人に対し、不法行為に基づき慰謝料と遅延損害金の支払いを求める事案で最高裁第二小法廷は、上告人の請求を棄却した原判決を棄却、原審の判断には審理不尽の違法があるとして大阪高裁に差し戻した。
原審は、上告人が迷惑行為や財産的な損害等の不快感や不安を超える損害を被ったことについての主張、立証がされていないとし、請求はその余の点について判断するまでもなく理由がないとした。個人情報の漏えいに遭ったのは未成年者とその保護者。被上告人は通信教育等を目的とする会社。被上告人のシステム開発、運用を行っていた会社の業務委託先の従業員だった者がデータベースから不正に持ち出した。
最高裁は▽個人情報は上告人のプライバシーに係る情報として法的保護の対象となる▽上告人はプライバシーを侵害された―と指摘。原審は、その侵害による精神的損害の有無やその程度等について十分に審理せず、不快感等を超える損害の発生についての主張、立証がないということのみから直ちに請求を棄却すべきとしたと批判。不法行為における損害に関する法令の解釈適用を誤った結果、審理を尽くさなかったと説示した。
■参考:最高裁判所|損害賠償請求事件・平成29年10月23日/第二小法廷|
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=87154