運・鈍・根(うん・どん・こん)とは、事業に成功する人の三要素で、運に恵まれて根気よく耐えて努力する人のことである。ただ「鈍」は、文字通り単純に捉えると真意がよく分からず誤解するかもしれない。前述のように、元々は運に恵まれ、鈍感なほど根気強く物事に取り組む人という意味であろうが、「鈍」とは何物にも動揺しない確固とした信念があり、豊かな個性と他人への愛想(あいそ)や強い思い遣りを持っているということではなかろうか。
例えば、期待された仕事の成果が出ない時、同僚から馬鹿にされたりしても一緒に笑って平気な人がいる。次は必ず成果を上げて見せるという強い自信かもしれない。また、お客様から苦情や注文を付けられたり、上司等から厳しく注意されたりしても、その後は平然と仕事に取り掛かる人がいる。普通の感覚からは、時に鈍感な人と思われるかもしれないが、実は切り替えの早い仕事熱心な人と評価しても良いだろう。注意を要するのは、自分に対して鈍は良いかもしれないが、他人に対して鈍では困るということだ。
経営の神様と言われた松下幸之助氏は、問題を起こした社員を厳しく叱責した後は、その上司を呼んで部下を慰めてやれと指示をした。「鈍」とは自分には厳しく、他人には寛大にすることだ。