当たり前であるが、売買(契約)は「買って下さい」「売って下さい」の合意によって成立する。意外にも、当事者がこの言葉を明確に言ってない場合が多いようだ。
例えば、婦人服の店において、お客が選択に迷っているような場合である。お客と接客している店員が一緒に迷って、結局何も買わずに帰る事がある。購入決定を促す接客言葉が欠落している。また、成績が振るわない営業マン等に見られるが、売込みの挨拶や商品説明は立派に実行していても、購入を促す「どうぞ、買って下さい」と言う言葉が曖昧であったりする。
商品の販売には、購入の迷いを断つ明確な言葉が必要である。自信の無い販売者は、「検討をお願いします」「また説明に来ます」「高額品ですから、一度で決められないでしょう」等を結論にして去ってしまう。「買って下さい」「売って下さい」の言い方や所要時間は、商品の種類や業界慣習等によって異なる。不動産のような高額品であれば、数回以上の面談交渉によって発する言葉である。食品雑貨の日常の買物であれば、陳列してある事が「買って下さい」を表し、レジに商品を持って行く事が「売って下さい」を表す。しかし、説明で商品を売る仕事であれば、結論として「買って下さい」を明確に言う事が必要である。