弁護士法23条の2第2項に基づく照会をA社に対して行った弁護士会である被上告人が、A社を吸収合併した上告人に対し主位的に、A社が23条照会に対する報告を拒絶したことにより被上告人の法律上保護される利益が侵害されたと主張して不法行為に基づく損害賠償を求め、予備的に、上告人が23条照会に対する報告をする義務を負うことの確認を求めた事案で最高裁第三小法廷は、原判決中、上告人の敗訴部分を破棄し、前項の部分につき被上告人の控訴を棄却するとともに、報告義務確認請求に関する部分につき本件を名古屋高裁に差し戻した。
報告を拒絶する行為について高裁は、弁護士会の法律上保護される利益を侵害し不法行為を構成するとして、被上告人の主位的請求を一部認容した。
これに対し最高裁は、23条照会をした弁護士会の法律上保護される利益を侵害するものとして弁護士会への不法行為を構成することはないという真逆の判断を示した。理由として、弁護士会が23条照会の権限を付与されているのは、あくまで事件の処理に必要な事実の調査等を容易にするために設けられた制度そのものの適正な運用を図るためにすぎず、報告を受けることについて弁護士会が法律上保護される利益を有するものとは解されないと説示した。
■参考:最高裁判所|損害賠償請求事件(平成28年10月18日・第三小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=86198