抗告人による全部取得条項付き種類株式の取得に反対した抗告人の株主である相手方らが、会社法172条1項(26年法律第90号による改正前のもの)に基づき、全部取得条項付き種類株式の取得の価格の決定の申し立てをした事案で最高裁第一小法廷は、1株13万0,206円とした原決定を破棄、原々決定を取り消し、抗告人側が提示した公開買い付け価格である同12万3,000円とすると判決した。原審は、取得日までの市場全体の株価の動向を考慮した補正をするなどして算定すべきで、公開買い付け価格の採用はできないとした。
最高裁は、多数株主が公開買い付けを行い、その後に株式を全部取得条項付き種類株式とし、当該会社が同株式の全部を取得する取引において、多数株主等と少数株主の間の利益相反関係により意思決定過程が恣意的にならない措置が講じられ、買い付けに応募しなかった株主の保有する株式も公開買い付け価格と同額で取得する旨が明示されるなど一般に公正な手続きにより買い付けが行われ、その後に当該会社が買い付け等の価格と同額で全部取得条項付き種類株式を取得した場合には、予期しない変動が生じたと認めるに足りる特段の事情がない限り、裁判所は公開買い付け等の価格と同額とするのが相当だと説示した。
■参考:最高裁判所|株式取得価格決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件(平成28年7月1日・最高裁判所第一小法廷)|
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85989