不動産市況:賃貸入居者の募集が一段と難しい時代に
図表は、首都圏の都県別ごとに賃貸の空室数を指数化したものである。千葉県と埼玉県とでは大きく異なり、地域格差が顕著である。
日本には、空き家が約820万戸も存在するが、相続対策需要もあって賃貸物件の供給は今なお、盛んに行われている。更に、国内人口が減り、高齢者専用の施設が増え、世帯分離(独り暮らしなど)が経済状況から増えにくい現在、完全な借り手市場になっている。
ただ、空室は偏在しており、地域格差に加え、物件格差も拡がっている。以前は立地がよければ価格を調整すればよかったが、今では古い物件を中心に、入居者集めには苦労を要する。マーケットと入居者の状況を熟知した専門家の力が必要な時代になっている。
今月の視点:不動産の売れ行き減速が顕著に
4月の消費増税スタートから、5ヶ月が経過した。当初、前回の3%から5%への引き上げ時に比べて増税の影響は少なく感じられた。特に3ヶ月目の6月については、一般消費財の反動減が一段落し、先行きに対する強気な見方も数多く見受けられた。
しかし、最近の経済動向を見ると、厳しさが増しているように思える。国民の懐具合だけでなく、心理的にも以前とは異なってきているようだ。一昨年12月、安倍総理誕生時には1ドル83円台だった為替レートが、最近では105円台へと3割近くも通貨が下落している。「生産拠点の海外移転が進み、円安誘導の効果は以前より軽微で、輸入物価上昇の悪影響の方が大きい」との声もあったが、的を射ていたことが証明されてしまった。
アベノミクス政策の1本目の矢は放たれたが、次がなく、高揚感は薄れつつある。住宅・不動産分野の実態を見ても、消費増税の影響を最も強く受ける注文住宅事業は仕方ないにしても、どの分野でも減速傾向が顕著になっていて、売れ残りの物件が目立ってきている。これから先の事業展開に不安を持つ経営者も増えている。
業界で特に厳しいのは、地価と建築費の上昇にさらされる分譲業だが、消費者が好む利便性の良い土地は各社が競って買うため、売れ残りが全体として増加している中でも、地価上昇が続いている。
(情報提供:ネットワーク88)