建物の区分所有等に関する法律59条1項に規定する競売を請求する権利を被保全権利として、民事保全法53条または55条に規定する方法により仮処分の執行を行う処分禁止の仮処分を申し立てることの可否が争われた事案で、最高裁第二小法廷はできないと解するのが相当であり、原審が示したこれと同旨の判断は正当として是認できるとし、原審に続き上告を棄却した。
最高裁はその理由として、建物の区分所有等に関する法律59条1項の規定に基づく競売を請求する権利は、民事保全法53条に規定する登記請求権を保全するための処分禁止の仮処分、55条に規定する建物の収去および敷地の明け渡しの請求権を保全するための建物の処分禁止の仮処分の請求権とはいえないと指摘。
競売を請求する権利は、特定の区分所有者が区分所有者の共同の利益に反する行為をするか、そうした行為をする恐れがあることを原因として、区分所有者の共同生活の維持を図るため、他の区分所有者等が当該行為に係る区分所有者の区分所有権等を競売により強制的に処分させ、当該区分所有者を区分所有関係から排除しようとする趣旨のものと説示。当該区分所有者が任意に所有権等を処分することは法の趣旨に反するものとはいえず、禁止することは相当でないとした。
■参考:最高裁判所|仮処分決定取消及び仮処分命令申立て却下決定に対する保全抗告棄却決定に対する許可抗告事件(平成28年3月18日・最高裁判所第二小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85764