吸収合併した企業の未処理欠損金の扱いをめぐり適格合併か、組織再編成に係る行為または計算の否認に当たるか否かが争われた事案で最高裁第一小法廷は、否認に当たると判断、上告人が申し立てた法人税の更正処分などの賦課決定処分の取り消し請求を棄却、原審の判断を正当と是認した。これにより上告人の敗訴が確定した。
上告人は21年2月にa社からb社の発行済み株式の全部を譲り受け、同年3月30日にb社を被合併会社とする吸収合併をし、20年4月から21年3月までの事業年度に係る法人税の確定申告にあたり、法人税法2条12号の8の適格合併に適用される同法57条2項によりb社の未処理欠損金額を上告人の欠損金額とみなして損金の額に算入した。麻布税務署長は、組織再編成に係る行為または計算の否認規定である同法132条の2を適用、法人税の更正処分および過少申告加算税の賦課決定処分をした。買収前にa社の代表取締役社長がb社の取締役副社長に就任。これが租税回避行為に当たるか否かが争点となった。
最高裁は、組織再編税制に係る各規定を租税回避の手段として乱用することにより法人税の負担を減少させるものであり、「法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるもの」に当たるとした。
■参考:最高裁判所|法人税更正処分取消請求事件(平成28年2月29日・最高裁判所第一小法廷)
http://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=85710