業種や規模にもよるが、一部の中小企業で正社員の採用が難しくなっている。以前は、長くパートを勤めている人や優秀な契約社員等に「正社員になりませんか」と言えば、喜んで受け入れる人が多かった。しかし、今は自己の生活スタイルや家族の団欒を優先して、正社員になりたくない人も珍しくない。
X社(婦人服小売業)は女性パート社員が主力だが、有能な人を正社員に抜擢しようとしても簡単に応じてもらえない。その原因は、主に次のような事情であった。(1)正社員は就業時間(夜8:00)まで勤めなければならず、残業も多い(2)正社員とパートの待遇(給料)に大きな差がなく、責任だけ重くなる(3)正社員はイベント(日曜・祭日に行う展示会、顧客の招待旅行等)の時に、朝早くから夜遅くまで拘束される(4)パートのほとんどは指示命令を受けるだけであるが、正社員は指示命令を発する立場になるので、その後の人間関係が難しくなる。X社は、終業時間を早めたり、正社員の基本給を上げたり等の工夫をしたが、今のところ大きな効果は出ていない。
今後は正社員とパートの割合を見直し(正社員の割合増)、経営の長期的発展性と待遇(給料や公平な人事処遇制度)の改善を明確に示して行きたいと考えている。