担保とした複数の土地の一部に対する強制換価手続の開始をもって行われた相続税の延納許可の取消に対し、(1)適切な弁明聴取を欠き(2)裁量権の逸脱又は濫用にあたるとしてその全部の取消が求められた事案で審判所は、処分は適法と判断した。
審査請求人は、相続税法40条2項は担保物全てを示すと主張、加えて弁明書の提出後1カ月未満での処分を不服とした。審判所は、担保の一部のみ対象であっても換価により税の徴収が困難となる恐れが生じるとし、手続が始まれば弁明聴取なく処分できるとした同項が適用されるとした。
また請求人は、不動産の売却により納税を行う意思を示していたと主張。しかし分納期限変更の許可を二度も受けながら滞納国税を納付できず、弁明書に納付する旨記載した第18回分の分納税額も納付しなかった。配偶者の答述によれば、預貯金もほとんど有しておらず、所有する不動産については、第三者の抵当権が設定されるか既に差押えの対象となっており、市街化調整区域内の農地でもあるため売却困難であったという。審判所は、処分の時点で請求人に納付できる見込みはなく、許可を維持すれば国税の徴収に支障を来すとの判断は、二度の期限変更許可、弁明聴取を経ていることからも、合理性があると認めた。
■参考:国税不服審判所|相続税の延納許可の取消処分・棄却・平成26年11月25日裁決|
http://www.kfs.go.jp/service/MP/04/0901000000.html#a97