本件は、令和2年5月に相続が開始された事案において、被相続人である特定贈与者より生前贈与を受けた長女が相続開始前に死亡していた場合に、当該長女の配偶者がその権利義務を承継するか否かが争点となった、相続税の更正処分に関する裁決事例。
国税不服審判所は、当該長女の配偶者について、踪宣告がなされない限り生存が推定されるとして、併せて本件長女の除籍謄本には離婚の事実の記載がないことから、本件長女の配偶者は本件長女の相続開始日において同人の相続人であったといえるとした上で、民法の規定に基づき、配偶者が長女の包括承継人としてその相続時精算課税制度に係る権利義務を承継するものと判断。したがって、長女が被相続人から贈与により取得した財産については、相続税法第21条の15第5項に基づき、その贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算すべきものとされた。
請求人は、長女の配偶者が失踪状態にあるとして権利義務の承継を否定し、課税価格への加算は不当であると主張したが、審判所は失踪宣告の事実が存在しない以上、法律上の相続が発生し、包括承継が行われたものと認定した。これにより、原処分である相続税の更正処分は適法であるとして、請求人の請求は棄却された。令和6年10月7日裁決。
■参考:国税不服審判所|特定贈与者から贈与により取得した相続時精算課税の適用財産の価額は相続税の課税価格に加算されることとなると判断した事例(令和6年10月7日・裁決)|