履歴書や志望動機、本人の人柄やキャリアなどにより採用するかどうか判断することが一般的だが、採用活動に遺伝情報を利用しようとする動きが出始めている。「遺伝的に優れている」可能性を探り、よりよい人材を確保する狙いではあるが、野放しにしておくと不当な差別等につながりかねない。令和5年の通常国会において、ゲノム情報による不当な差別等への適切な対応の確保に関する条項が盛り込まれた「良質かつ適切なゲノム医療を国民が安心して受けられるようにするための施策の総合的かつ計画的な推進に関する法律」が成立したが、厚生労働省では労働分野におけるゲノム情報に関する基本的な考え方を示すQ&Aを公表した。
遺伝情報は「社会的差別の原因となるおそれのある事項」に含まれるため、採用にあたって収集してはならないこと、採用後に健康管理への情報として労働者のゲノム情報を収集することはできないこと、ゲノム情報を提出しないことを理由に、人事評価を低評価とするなどの不利益取扱いは不適切であること、提出したゲノム情報を理由とする解雇は一般的には解雇権の濫用に該当し無効となること、ゲノム情報に基づいて人事異動をさせたり昇給・昇格に影響を与えることも問題であるとしている。
■参考:厚生労働省|ゲノム情報による不当な差別等への対応の確保(労働分野における対応|
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/roudouzenpan/42095.html